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建物は、周りに何も無く、広大な大地が永遠に続く中に建っている。
非常に恵まれた環境条件ではあるが、 逆に言えば、建物に立体感が出にくい条件でもある。奥行 1.8 m
・ 幅 8.19 m の浮遊する床と、 水平要素の強い敷地と建物に逆らう様に挿入した、縦に長い壁は、建物に
立体感を与える装置となっている。
浮遊する床は、 水平ラインをより強調すると共に、建物に軽やかさを与えている。 垂直ラインを強調する
壁は、建物に力強さを与える。 この水平と垂直の関係や軽やかさと力強さの関係によって、建物を立体的
に見せている。
この建物は、 広大な敷地のため、水平ラインが非常に強くでてしまう、縦に長い壁を挿入する要素だけで
は、水平とのバランスが取れない。よって、いかに横と縦のバランスをうまくまとめるかが、鍵である。
壁を利用した階段室による、 縦への人の動線と南面の大きな窓を介して見える内部の壁が、外部の壁と
繋がり作り出す連続性は、垂直ラインをより強調する要素として与えている。
階段室は、ワザと見せ空間を演出している。 階段の踏板が落とす影、 跳出した踊り場の緊張感、 パイプ
手摺の透明性は、空間にリズムを与える媒体となっている。
階段は、多くの建物で、昇るためだけの道具として設けられている、今回のような限られた建物ボリューム
の空間を演出するのには大切な要素である。